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​Our Research

 私たちの研究室では、教授の清野が消化器外科でがんの診療と臓器移植に携わって来た経緯から、がんと移植という2つの大きなテーマを中心に、それらに関係する免疫学ならびに周辺生物学を研究しています。以下に、我々が行っている研究内容についてご紹介します。

腫瘍免疫学から細胞療法研究へ

 がん(腫瘍)は、がん細胞だけで存在しているのではなく、周囲の様々な細胞との相互作用の上に成り立っています。私たちはこれまで腫瘍微小環境において誘導される治療抵抗性に興味を持ち研究を進めてきました。特に、腫瘍内に存在するマクロファージに注目し研究を進めてきた結果、新しいサイトカインIL-34によって免疫抑制性マクロファージが誘導され、抗腫瘍T細胞の機能が抑制されていることを明らかにしました。。

 

 様々な臨床のがんについて調べたところ、卵巣がん(Int Immuno 2019)、大腸がん(Immunol Med 2019)、乳がん(Breast Cancer 2020)においてIL-34は予後と創刊していることを明らかにしました。またIL-34は多発性骨髄腫における骨病変の形成にも重要な役割を果たしている事を発見しました(Blood Adv 2019)。

 また近年注目されている免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による治療においてもIL-34は重要な役割を果たします。IL-34を発現するがんではICIの効果は非常に限定的です。一方、IL-34が働かないようにしてやると、途端にICIの効きが高まる(がんが小さくなる)ことがわかりました。これは、IL-34が存在すると腫瘍の中のマクロファージが戦う力を失くし、むしろ周囲の免疫細胞の力を削ぐ(抑制的に働く)ためであることもわかりました(iScience 2020)。こういった研究では、免疫不全マウスの体内でヒトの免疫系を再現する「免疫ヒト化マウス」も利用してきました(STAR Protocols 2020)。

 

 

 最近、このIL-34刺激で生成されたマクロファージを逆に利用することについても検討しています。治療学全体の歴史とトレンドを考え、今後は細胞を薬のように用いてさまざまな疾患の治療に用いる「細胞療法」の時代が来るだろうと考え、その手始めとして肝硬変(肝線維症)に対する自己マクロファージ療法に取り組んでいます。この方法は動物実験では古い歴史があり、現在英国では臨床試験が行われています。私たちはIL-34で誘導したマクロファージも同様の効果をもたらすのではないかと考え、動物実験を行いました。その結果、非常に良い結果を得ることができました。本研究は現在AMEDの支援を得、また企業との共同研究に発展し、実用化に向け鋭意努力しているところです。

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​移植免疫学

「iPS細胞由来移植片を用いる移植医療における新しい免疫抑制・寛容誘導法の開発」​

 

 iPS細胞を用いる再生医療とiPS細胞バンク構想

 ES細胞やiPS細胞といった多能性幹細胞は、神経細胞や心筋細胞など、さまざまな細胞になる潜在能力をもった細胞で、その利用は再生医療において非常に期待されています。iPS細胞を用いた再生医療は近未来の医療として考えられておりましたが、既にもはや現実のものとなってきています。iPS細胞を用いた再生医療の理想は、患者自身の細胞から作製したiPS細胞から必要な細胞・組織を分化誘導し、移植するという方法です。しかしこの場合、脊髄損傷など緊急に細胞移植を要する疾患には適用できません。また、作製したiPS細胞の品質や安全性の確認等には多大な費用と時間を要します。そこで現在、様々な試験を経て安全性を確保したiPS細胞を保管するiPS細胞バンク構想が進んでいます。

 iPS細胞を用いる再生医療でも免疫制御は重要

 iPS細胞バンクでは、様々な種類のHLA型背景をもつiPS細胞をバンク化することで、免疫学的拒絶問題に対する配慮がなされています。また、ゲノム編集技術によりHLAを欠失させたりNK細胞からの攻撃を弱めたiPS細胞も作成されています。しかし実際には、非自己由来の細胞はHLA以外にも他の成分の不一致により移植片は拒絶されてしまいます(そういった抗原をマイナー抗原と呼びます)。私たちはまず、このマイナー抗原のみによって拒絶反応が起きるマウス移植実験系を確立しました(Sci Rep 2020)。

  その後同モデルを用いて、従来の免疫抑制剤を用いた場合の適切な免疫抑制療法、また免疫寛容の誘導が可能であることを明らかにしました(Inflamm Regener 2022)。現在はさらに内容を進め、iPS細胞から免疫寛容源になるような細胞を作成し、細胞療法によって免疫寛容を誘導することを目指しています最近、iPS細胞から誘導した造血幹・前駆細胞を用いたmixed chimerismにより免疫寛容を誘導することに成功しました(Am J Transplant 2023)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 近年、遺伝子改変したブタの開発が急速に進み、サルへの移植実験そして実際にヒトへの移植も行われるようになって来ました。この技術は非常に重要であり、特にドナー不足に悩む日本では真剣に取り組むべき課題です。我々は北大泌尿器科との共同研究により、異種移植の研究に取り組んでいます。今後の発展にご期待ください。

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